弁当

maki-no2009-08-30

武田百合子さんの『富士日記』の中に、山の家の工事にやってきた地元の人たちの弁当のことが書いてある。
「弁当箱には、ごはんがびっしりお餅になってしまったように詰まっていて、もう一つの同じ位大きい弁当箱には、ほうれん草か小松菜らしいおひたしが、これもびっしり詰まっていて、袋の中から日水のソーセージなどを出してかじりながら、実においしそうに食べる」
この間、近所の工事現場にきていたガードマンのおじさんが、炎天下、一人で道の端に座り込んで弁当を食べていた。木の大きくて厚みのある弁当箱には、雑穀入りのごはんだけが、びっしり詰まっていた。その弁当箱の蓋の中に、剥きかけの一本の魚肉ソーセージが入っていた。おかずはそれだけ。
富士日記だ」と思った。
おじさんは工事が続いている間、いつも一人で同じ場所に座り込んで弁当を食べてた。
高そうなレストランでランチを食べてる人を見ても何も思わないけど、おじさんが弁当を食べてた光景は、いつまでも忘れられない。