森ハ青ヒ殻透ク夜ト林檎ノ蒸気

9月、朝起きたら猫がいなくなっていた。
編み戸を破って逃亡したのだ。
本当は女の子だったサバトラのぽー。
夜までの10数時間、外を歩き回って捜した。
動物愛護協会に電話してみるといいと聞き、かけてみた。
「外に出たことがない子が出てしまった場合、怖くてすぐ近所でじっとしています。ほとんどそうです。まだ必ず近くにいますから、足元をよく見ながらぐるぐる歩いてみてください」
と言われた。
もしかしたらすでに12時間ほどたっているかもしれなくてもですか?と半泣きで聞くと、
「ええ、まだきっと近くにいます」と力強く言われた。
そこからまた夜まで歩いた。
海の中のコインを探すような気持ち。
どこにもいない。
途方に暮れた頃、近所の人が「あそこにいるのは違う?」と教えてくれた。
3件先の小さな会社のネットだけ張ってある倉庫の前。
会社の人達がみんな帰ったので出てきたらしい。
飛んで行ったら倉庫の中に逃げ込んでしまった。
興奮していて落ち着かない。
寄ってこない。
急いで缶詰を取りに行き、おびき寄せ、不法侵入までして(スミマセン)どうにかやっとつかまえて抱いて帰ろうとしたら、近所の人を見て暴れ、私の鼻を噛んで、胸を引っ掻いて、おしっこちびってまた逃げてしまった。
倉庫の裏の蚊だらけの草むらに。
そこから2時間、鼻から血を流しながら必死。
大雨がいきなり降ってきて縮こまっているのを、首根っこをギュッとつかんでやっとつかまえた。
長い長い一日。
帰ってきてガツガツご飯を食べ、死んだように眠っていた。
私も熱中症だったのか頭が痛くて薬を飲んで寝た。


翌日同じ道を歩いてみたら、あちこちが意外に遠くて驚いた。
暑さも距離もまるでわかっていなかった。


でもまた一緒にいられることがどんなにか幸せなことか。

11月に二人展を開きます。
長いタイトルは山田勇男さんが考えて字を書いてくださいました。
すごく素敵です。
内容が負けないように頑張らなくちゃ。
詳しくはホームページをご覧くださいね。
http://kitchen-kiki.org/information.html