みぞれ

大雪は降らなかったね。


小降りになった夕方、猫缶、猫草を買いに行く。
商店街の小さなペットショップまで。
おばあさんがバギーを引っ張りあげるようにして、店に入って行くところだった。
「おむつある?年とっちゃって、夕べからおねしょするようになっちゃって」
おむつは使ったことがないので、どんなのあるのかわからないと言う。
よたよたした赤いカッパを着せられた小さな犬がバギーから下ろされた。
お店のお姉さんが胴周りを測って、サイズが合うおむつを出してあげてた。
「16さい。16さいって言ったら人間で言うといくつかねえ?」
「100さいくらいかなぁ」
お姉さんが答えながら、じーっとしてる犬をそうっと抱えてバギーに乗せてあげた。
小さな本ニンには何もわからない。
おねしょするようになってしまったことも、こんなに大事にされてることも。
16年たってしまったんだなぁ。
16年前子犬で、おばあさんももっと若くって。
ずっと一緒にいたんだね。


猫草を買って帰り、台所のすみに置いてやったら早速やって来て食べていた。
ぷーんと緑のにおいが漂ってきた。
まだまだ一緒にいようねと思った。